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W杯開幕直前、サッカーを科学的に検証 そこに見えてくるもの

2018-06-14 13:19


【パリAFP=時事】14日に開幕する2018年サッカーW杯ロシア大会。テレビにくぎ付けになって試合に見入るのは、サッカーファンだけではない。空気力学、心理学、人体構造学といった領域を専門とする科学者たちもまた、選手やボールの動きを逐一追い、美しい試合のすべての側面を精査している。≪写真は2018年サッカーW杯ロシア大会の公式球「テルスター18」≫
■公式球「テルスター18」
W杯でほぼ毎回問題となるのはボールだ。W杯の公式球は1970年大会以降、独スポーツ用品大手アディダスが設計している。
今年の公式球「テルスター18」はすでに一部のゴールキーパーから、変化しやすくてつかみにくいと批判されている。だが、科学者たちはこのボールについて、実際は極めて安定していて、2010年南アフリカ大会でさんざんけなされた公式球「ジャブラニ」よりは確実に上だと言う。
「テルスター18」は、アディダスが初めて担当した1970年メキシコ大会の公式球「テルスター」へのノスタルジックな回帰だ。このときのW杯で初めて、白黒テレビでの放送でボールを識別しやすくするために白い六角形と黒い五角形の革パネルを貼り合わせたボールが採用された。
「テルスター18」について調べるため、研究チームはこのほど、風洞試験と表面測定を行った。その結果、前回2014年ブラジル大会の公式球「ブラズーカ」と比べると空気抵抗が大きく、時速90キロ以上の衝撃速度で蹴った場合の飛距離はブラズーカよりも8〜10%ほど短くなることが分かった。
実験に参加した米リンチバーグ大学のエリック・ゴフ教授(物理学)は、「遠距離から狙うストライカーにとっては厳しいボールで、非常に強く蹴る必要がある」と説明。一方で「ブラズーカよりもやや到達速度が遅い」のでキーパーにとっては有利になるとした。
他方で筑波大学のスポーツ科学研究者、洪性賛氏は、キックロボットによる実験を通じて、過去のW杯公式球に比べてテルスター18の「飛翔軌道は非常に安定している」ことを確認したという。つまり、フリーキックやコーナーキックなどのセットプレー、あるいは強力なミドルレンジ・シュートを打った際などに効果的だと同氏は述べる。
■色の心理ゲーム
勝利の方程式に必要なのは、最高の選手と最高の監督、高度なスキルと幸運だけではない。ある研究によるとチームカラーも優位をもたらし得る──特にそれが「赤」のときだ。
英チチェスター大学のスポーツ心理学者、イアン・グリーンリーズ氏が共同執筆者となった研究論文は、赤いユニホームはペナルティーキックの場合に、キッカーが着ていても、ゴールキーパーが着ていても利益があるとしている。
この研究によると、赤いユニホームを着た選手は味方から見ても相手から見ても、より優位でテクニカルなプレーヤーであるとの印象を与えるため、相手チームに対しては不安と、結果的にパフォーマンスの低下をもたらすのだという。
AFPの取材に応じたグリーンリーズ氏は、人が赤い色から血の色を連想して危険と感じたり、怒ったときの顔色と結び付けて攻撃的だと捉えるように進化したとする一説を紹介した。その他にも、赤は目立つため相手チームの集中力がそがれやすいといった見解もあるという。
確かに「赤いチーム」の成功の証しとなるエピソードはある。例えば、イングランド代表がW杯で優勝した1966年のイングランド大会。この年のW杯決勝では、対戦相手の西ドイツのユニホームが白だったために、イングランド代表は通常のホームカラーの白ではなくアウェーカラーの赤いユニホームで試合に臨み、勝利。これまでで唯一の優勝となった。
しかし、W杯優勝回数が最も多いブラジルのユニホームが黄色なことや、前回大会優勝国のドイツが白いことはこれでは説明にならない。
例えば、緑色のピッチ上で白いユニホームの視認性が高まり「パス成功率が上昇する」可能性があるとの研究結果がある。反対に緑色のユニホームは相手から認識されにくく、チームのディフェンス能力を向上させるという。
何色であれ全体的な影響は小さく、「白であれ青であれ緑であれ、秀でたチームは、赤いユニホームを着た平均的なチームに勝るはずだ」とグリーンリーズ氏は指摘する。だが、チームの力が均衡している場合には、ユニホームの色が多少局面を変えるかもしれない。
■ゴールをこじ開けるのは、直前2つの動作の創造性
ペレも決めた。メッシも決めた。ロナウドやネイマールも決めた。
華麗な技によるサプライズは試合を一瞬にして変え、ファンたちに火をつけることができる。ペレによって有名になったバイシクル・シュートや、ノールックにキックフェイント、ディフェンダーを翻弄(ほんろう)する「エラシコ」と呼ばれるドリブル…これらは観衆を湧かせるためにだけ発明された技ではない。
「高い創造性」が実は、勝者を予測する良い目安になるとする研究が4月、英スポーツ科学専門誌「ジャーナル・オブ・スポーツ・サイエンス」に発表された。
研究では2010年と14年のW杯と、16年の欧州選手権のうち得点があった153試合の流れの中での全ゴール311点を分析した。特に着目したのはそれぞれのゴール前の8つの動作で、ボールの扱いのコンビネーションに「サプライズがあること、オリジナリティーがあること、フレキシブリティーがあること」を基準に「創造性」を0〜10点で採点した。
結果、ゴールを狙う前の最後の2つの動作に高い創造性があるかどうかが、試合の行方を占う最も有効な予測材料になることを発見した。
この研究によると極めて創造的な動作は試合中には珍しく、10回の動作に対して1回を下回る割合だったが、得点されたゴールのほぼ半分には1回以上の極めて創造的な動作が関与していた。
「チームの勝利にとって戦術的な創造性は決定的な要素」であると思われ、それは選手の選考が重要な鍵となる上に「トレーニングによって」高められるべきだと研究者らは指摘している。【翻訳編集AFPBBNews】

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