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官邸、世論に押され容認=くすぶる制度恒久化論―天皇退位

2019-04-29 15:32

天皇陛下が2016年8月、国民向けのビデオメッセージで退位の意向を強く示唆されたのを機に、政府・与野党で憲政史上初となる退位実現に向けた検討が本格化した。首相官邸は当初、退位に否定的だったが、国民世論の多くが陛下を支持したことから容認に転じ、一代限りの退位を可能とする特例法が成立した。ただ、制度の恒久化を求める声はくすぶっており、今後、再燃する可能性もありそうだ。
陛下はビデオメッセージで「次第に進む身体の衰えを考慮する時、これまでのように全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが難しくなるのではないか」と述べ、退位を強くにじませた。
陛下が退位の意向を周囲に明かしたのは10年7月にさかのぼる。当時の宮内庁参与らが集まった参与会議で、陛下は自身の身の処し方について「譲位を考えたい」と言及した。
皇室典範に譲位の規定はなく、自らの意思で皇位を譲ることは「国政に関する権能を有しない」と定めた憲法にも抵触しかねない。陛下の意向を伝えられた官邸は、譲位が政争の具となった歴史を踏まえ、水面下で公務の負担軽減や摂政などの代替案を探った。明治以降の天皇終身在位制の前提を重視する保守派への配慮もあった。
だが、陛下の意向が報道されるに至り、官邸は退位の検討にかじを切った。報道各社の世論調査では、高齢を理由にした退位に反対する意見はわずかで、官邸もあらがえなかった。
陛下のメッセージ公表後、安倍晋三首相は「陛下のご年齢やご公務の負担、ご心労に思いを致し、どのようなことができるのかしっかり考えていかなければならない」と表明。「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」を設け、一代限りの退位を特例で認める報告書がまとまった。
国会では旧民進党などが皇室典範改正による退位の恒久制度化を主張した。政府も野党に歩み寄り、法案の名称に今の陛下を示す「天皇陛下」ではなく、一般名称としての「天皇」を用いることを決定。衆参両院本会議で、全会一致での可決にこぎ着けた。
だが、陛下の学友は「陛下の意思に反する結果」と、一代限りの退位に否定的だ。野党からは「皇位の継承を望まない意思を公表された場合に、どうするのか」と新たな疑問も出ている。憲政史上初めての退位は、皇室典範が想定していなかった課題を突き付けている。
[時事通信社]

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