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天皇・皇后両陛下、「象徴の在り方」意味付けた=五百旗頭真・神戸大名誉教授

2019-02-25 05:29

天皇、皇后両陛下は象徴として静的に存在するだけでなく、「国民統合の象徴を具現する行動」を自らの任務と考えられてきた。国民共同体の中の不遇な人々を支えることに意を用いる。その典型が被災地訪問だ。膝をつき、被災者と同じ目線で手を握る、それが雲仙・普賢岳の噴火(1991年)以来繰り返されている。被災者は「こんなにも国民として大事にしてくださるんだ」と前向きな気持ちを取り戻すことができる。
もう一つ両陛下が大事にされているのが、戦争で被害を受けた人たちに思いを寄せること。サイパンやパラオなどの激戦地を訪れた「慰霊の旅」も、平和への祈りを行動で表すものだ。昭和天皇が平和を望んでいたことはさまざまな史料から明らかだが、結局は開戦を認め、責任が全くないわけではない。それに対し、今上陛下は昭和天皇が果たせなかった各地での慰霊を熱心に行ってきた。できるだけ現地に出かけ、絶えず寄り添うというのが平成の両陛下の特徴だ。これはおそらく歴代天皇の中でも例外的で、並大抵のことではなかったと思う。
両陛下はこうした活動を通じて、現憲法下での象徴の在り方に一つの形を与え、意味付けた。バブル崩壊後の経済低迷、北朝鮮や中国の脅威、続発する大災害という「三重苦」に襲われた平成の時代に、日本人はポピュリズムに走ることなく、強権政治家に身を委ねもせず、人に優しい生き方を守った。移民の波にさらされず、国民皆保険などのセーフティーネットがしっかりしていたことが大きいが、こうした穏やかな生き方を、ある意味で両陛下が支えた面もある。
両陛下への支持は非常に高いが、それは本当に真心を込めて国民共同体を大事にしたからだ。天皇制には何か具体的な利益を与える役割はあり得ないが、国民的な心の問題、気持ちの持ち方を支えられた。強い意志を持って象徴天皇制に積極的な意味付けをし、余力のあるうちに皇太子さまに譲ることを決められたのは立派なことだったと思う。
[時事通信社]

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