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病院に銃、活動停止=暫定政権支配地、イエメン南部―帰国した邦人看護師語る

2018-12-15 14:31

内戦の地イエメン南部に2〜9月、国際医療団体「国境なき医師団(MSF)」から派遣されていた看護師、上平明美さん(50)=岩手県出身=が帰国し、ハディ暫定政権支配地の現状を語った。紛争地を含め過去10年、10カ国以上を渡り歩いて来たが、病院の対応に不満を抱いた患者の家族が銃を持ってやってきて、支援活動が停止に追い込まれたのは初めての経験だった。
東京都内のMSF日本事務所で11月29日、取材に応じた。派遣先は南部アッダリ。数年前は前線に近く、戦傷者や巻き添えの住民の搬送が絶えなかった。今は戦闘の中心が西部の要衝ホデイダに移動。少し平穏を取り戻したが「戦争による患者さんは週に4、5人。一挙に来る。みんな亡くなった状態で来ることもあった」と振り返った。
アッダリの市場で買い物をしているのは男性ばかり。通りを「ジャンビーヤ」という刀を腰に差して民族衣装を着た男性が歩いている。女性は全身を覆う服を着て、男性がいる時は「顔の覆いの横から入れて食べる。横に男性がいてはいけない。見えてしまうから」という暮らしに驚いた。
女性が1人で外出してはいけない。移動手段は車だが、国内どこへ行くにも72時間前、暫定政権とイスラム教シーア派系武装組織フーシ派、さらにサウジアラビア当局にも連絡しないと各地の検問所を通過できなかった。
ある日、大変なけんまくで事務所に乗り込んできて医師の態度に文句を言う男性がいた。素性を聞いたら「通りすがりの者だ」と平然と語る。赤の他人の困り事でも小耳に挟めば見過ごせない。こうした苦情や注文は四六時中で「良く言えば人情に厚い人たちだった」と上平さん。
3月、急患を優先し後回しにされた患者が怒って帰宅すると、その家族が銃を持って抗議に来た。「イエメン人はなぜか怒ると一度家に帰る。戻ってきた時が危ない」という。「スタッフの安全が確保されない」とMSF本部が判断。4、5月とアッダリでの活動は停止に追い込まれた。
その後、再開されたが、上平さんが帰国した直後、再び施設に対し「爆発物による攻撃を連続して受けた」とMSFが声明を発表。11月7日、アッダリからの撤退をMSFは決定している。
[時事通信社]

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