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「悲しみ癒えず」「法相に感謝」=オウム事件の被害者遺族

2018-07-06 17:54

「悲しみは癒やされない」「死刑より重い刑罰を」。オウム真理教による一連の事件で、家族を奪われた遺族や被害者は、複雑な思いを抱きながら松本智津夫死刑囚らの死刑執行を受け止めた。
公証役場事務長拉致事件で死亡した仮谷清志さん=当時(68)=の長男実さん(58)は、千葉県成田市内で報道陣の取材に応じ、「よく法相が死刑執行命令書に署名してくれた。言葉が変かもしれないが、感謝する」と淡々と語った。
実さんは「凶悪事件を起こした組織のトップが、命で罪を償うのは適切だ」と話す一方、「死刑より重い刑罰がないのが、ちょっともどかしい」と無念さもにじませた。
VX事件の被害者で、オウム真理教家族の会会長の永岡弘行さん(80)は「『死刑でシャンシャン』で終わらせてはならない。なぜ事件が起きたのか、いま一度考えてほしい」と求めた。
事件前から教団の危険性を訴えていた永岡さんは「宗教法人の認証を与えられて野放しにされていた。残念でならない」と振り返った。
東京都庁爆発物事件で重傷を負った内海正彰さん(67)は、「死刑になったからといって、被害者の苦しみや悲しみが癒やされるわけではない」と強調した。内海さんは都庁職員として事件に巻き込まれ、左手の全ての指と右手親指を失った。
普段の生活では教団や事件のことは考えないようにしてきた。「死刑は区切りではない」と話し、ニュースで執行を知った際も特別な感情は湧かず、「ああ、執行されたのか」と思ったという。
一方で、「執行によって英雄視されるようなことがあってはいけない」と指摘。後継団体による松本死刑囚の神格化を危惧し、「同じようなことが起きない社会になってもらいたい」と語った。
松本サリン事件で殺害された小林豊さん=当時(23)=の母房枝さん(76)は、「一日も早く全て終わればいい」と死刑囚全員の執行を訴えた。
房枝さんは、別の遺族から電話で死刑執行を知らされた。気持ちの整理がついていないとし、小林さんの仏壇に向かって「執行されたよ」と一言だけ声を掛けたという。
[時事通信社]

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